2011年6月27日星期一

オンラインゲーム産業そのもののレベルアップを目指して

オンラインゲーム産業そのもののレベルアップを目指して

 4Gamerも,それなりに長いことオンラインゲーム業界を見てきましたが,結局のところ昨今のこのビジネスモデルは,まだまだ「あこぎ」という意味で,微妙にレベルが低いものであることは否めないと思うのです。言うならば「取れるところから徹底的に取る」路線といいますか。
植田氏:
 なるほど。
4Gamer:
 ここでアイテム課金の是非を問うつもりはありませんし,アリかナシかで言うならば個人的には「アリ」だと思います。例えば経験値Upのポーションとか,移動速度が速くなる巻物とか,そういうアイテムにとりわけいえることですが,お金を出した人が,ちゃんと出しただけ「いい目にあえる」のは必然で,むしろそうならないほうが問題ですし。
植田氏:
 はい,おっしゃることは分かります。
4Gamer:
 ただやっぱり,ガチャを筆頭とする射幸心をあおる形での課金システムというのはやはり難もあって,それなりの数の人の反発を招きかねない手法ですよね。実際,いままでに何度か問題として騒がれたこともありましたし。
 オンラインゲームというものが市民権を得てからそれなりに時間が経つわけですが,ガチャや,例えばアカウントハックや,そういった,オンラインゲームそのものとは「直接関係のない」ことによって業界全体にネガティブなイメージがついてしまっていることは否定できないと思うのです。
川口氏:
 確かに,ネトゲ廃人とかオンラインゲームのイメージは,あまりよくないですね。
4Gamer:
 JOGAという業界団体が,いろんな取り組みをしているのは今のお話で良く分かったんですけど,産業として規模を大きくするだけでなく,そういうネガティブな部分もキチンとつぶしていかないと,業界全体がなんとなく上に上がっていけないと思うんですよ。産業として,ほかの産業に肩を並べられないというか。
 まぁ別に並べる必要はないんですけど,業界全体を本当に盛り上げていくなら,やはりどこかで一枚脱皮しなくてはいけないと思うんです。JOGAさんとしては,そのあたりは何かお考えでしょうか。
植田氏:
 おっしゃろうとしていることは分かります。
 JOGAが成すべきことは,業界全体の健全な発展のためのサポートです。つまりそれは言い方を変えると,会員企業のみなさんに啓蒙していって,その会員企業のみなさんとの協力による自助努力が必要だと思うんです。
4Gamer:
 そうですね。一社でどうにかできるものでもないですし。
植田氏:
 もちろんそれは,一日にして成りません。ずっと,長く,啓蒙し続けなくてはならないことだと思っています。その一環でJOGAでは,オンラインゲームガイドラインというものを発行していて,定期的にアップデートしております。
 これはJOGAのWebサイトから入手できるんですが,例えば決済に関してなどは,やはり課金額の上限の設定というのを設けるようにと各社さんに申し上げてるんですね。上限金額とか,連続の課金とか,そういう何かしらの制限というんでしょうか,ゲームを安心してプレイできるような内容です。とはいえJOGAには強制力はありませんし,やはり会員各位の努力に頼らざるを得ませんが。
4Gamer:
 しかしそれはやはり,「安心してプレイできない」というクレームもそれなりにある,ということの裏返しだと言ってもよいんでしょうか。
植田氏:
 クレームが多い云々以前に,インターネットにおけるビジネスの基本として,ある程度のルール作りとエンドユーザーさんを含めた啓蒙が必要だと思うんですよね。
 確かに,課金に対してのクレームというのは,それはもちろんそれなりにあります。ただ,現状我々がとりわけ問題視しているのは,不正アクセスとアカウントハックです。そこの問い合わせがここ何年かものすごく増えてきたんですね。
 そこに対しては,例えばワンタイムパスワード※というものを,JOGA共通基盤として導入しています。これは,準会員企業のサードネットワークさんと共同でやってるのですが。
(※コンピューターのアカウントのようなアクセス制限されたリソースからの未承認アクセスを防ぐための技術。従来の固定パスワードよりも高い効果を得られる。参考:Wikipedia)
4Gamer:
 ということは,JOGA会員企業は同じものを使ってるんですね。
川口氏:
 2010年は,自社開発システム導入企業を含めてこうしたシステムを導入している企業は9社で,今年も導入企業が増える予定です。
植田氏:
 言ってる自分のところ(編注:ゲームポット)がまだこれからなのでお恥ずかしいのですが,やはりちょっと大がかりな開発案件は,やろうと言ってから1年くらいかかったりしちゃうんですよね……。
 ともあれそういう取り組みを通じて,少なくとも自分のID――というかキャラクターかな――を守りたいという意志があるプレイヤーさんに対して,安価で提供できるような仕組みを作っていくべきだと思うんです。
4Gamer:
 そういう取り組みでほかに大きなものはありますか。
植田氏:
 3Dセキュア※ですかね。ええと……今9割くらいかな?
(※クレジットカードによるインターネットでの決済に利用される本人認証サービス。Wikipediaより)
川口氏:
 2010年内に会員企業の95%が3Dセキュアを導入しています。
植田氏:
 そう。95%くらいのJOGAの会員企業が導入しています。もしかしたら「なるほど」とおっしゃるだけかもしれませんが,実はインターネット上のECサイトなどと比較すると,これはすごい数字なんですよ。
4Gamer:
 なるほど。
植田氏:
 (笑)。確か,日本のECサイトの3Dセキュア導入率はそんなに多くないですよ。
4Gamer:
 そうですか? ……まぁでも確かに,そんなに多くは見かけませんね。
植田氏:
 ですよね。元々VISAさんから相談があったんです。不正決済が多いということで。
4Gamer:
 ……VISAって昔――といっても数年前,というレベルですが――オンラインゲームを決済するのを嫌がってた時期がありましたよね。VISAがオンラインゲーム決済をしなくなる,とまで言われてた時期。
植田氏:
 確かにそういう時期もありましたね。
 でも今は,3Dセキュアを導入することを徹底させることとか,ワンタイムパスワードの導入によって,かなり問い合わせというか被害の件数というのは減っているらしいです。同時にJOGAでは,不正課金を減らすための様々な対策や情報の共有も行っていますし。
4Gamer:
 理屈では分かっていましたが,やっぱり効果は相当あるんですね。
 ……しかし不正アクセスってそんな多いんですか。確かにここ数年,結構そういう事件を見聞きするな,という印象はありますが。
植田氏:
 3年くらい前が結構ピークでしたかね。とくに中国から。
4Gamer:
 今は違うところですか?
植田氏:
 まぁ今でもやっぱり中国からが多いんですけど……。
4Gamer:
 3年ほど前がピーク,ということはいまは数が純粋に減ってるんでしょうか。
植田氏:
 不正課金に関しては確実に減少しています。3Dセキュアとかワンタイムパスワードとか,そういう取り組みを始めてからは,とくに少なくなってきています。
 サーバーへのハッキングやアカウントの盗用などの問題は,対策をすれば新しい手口が出てきて,いたちごっこですね。何か対策すればすべて解決ではなく,継続して取り組んでいく必要があるので,JOGAの会員の中での情報共有を徹底しているんです。不正アクセスというのは,一つの特定のゲームだけに起こることではないので。
4Gamer:
 当然,連鎖しますよね。
植田氏:
 ええ。やはり,どこかで大きなトラブルがあったとなると,当然それは横に飛び火していくので,そういった部分をいち早く会員企業内で共有できるような仕組みも,JOGAは持っています。
川口氏:
 セキュリティワーキンググループでは,参加各社と機密保持契約を交わして,被害状況や有効な対策など有益な情報をオープンにしているんです。どういうユーザーサポートが有効だったのかなど。
4Gamer:
 文字どおり「全部」ですね。
川口氏:
 そうです。もちろん,オンラインゲーム会社の被害を少なくするということがJOGAとしては大事なのですが,最終的にはエンドユーザーさんに安心して遊んでもらえる環境を作ることが重要だと考えています。
 

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